仏画コラム
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28,新安祥寺流曼荼羅

新安祥寺流七十七尊両界曼荼羅 童学寺本

仏画
真言宗善通寺派・別格本山・童学寺本
新安祥寺流曼荼羅は江戸時代に活躍した律僧 浄厳(1639~1702)より始まる。浄厳について
は弟子蓮体による「浄厳大和尚行状記」及び「浄厳大和尚伝記資料集成」より知ることがで
きる。また浄厳研究では河内延命寺 住持上田霊城師の論考が極めて重要である。
浄厳の思想については次のように述べている。大師教学の遵奉者である浄厳は、経琉の教義
面については諸遮表両義の何も解いうる可能性の故にこれを本有表徳の大師思想に依つて解
釈することが出来たが、その実践面における無畏・大師の明確な相違点については容易に和
合出来ずその場合、善無畏説を用いたことに、経琉為本思想を見るのである。
新安流の金剛界曼荼羅は基本的に賢劫千仏を除いた成身会の一会曼荼羅である。
その為敷曼荼羅は天部の二十尊を除いた五十七尊であり、掛曼荼羅は、天部の二十尊を含め
た七十七尊となる。金剛界の一会曼荼羅は八十一尊であつて、七十七尊ではなく通例の四隅
の羯磨鎮檀を四大明王に置き換えることに依つて八十一尊となる。新安流の掛曼荼羅にはこ
の四大明王ではなく賢瓶が描かれる。金剛界の四大神の位置が現図と異なる。童学寺本は、
東南・地神、南西・火神、西北・水神、北東・風神である。金剛界は四大神の背景に金箔を
押しまた最外院の背景にも金箔を押す。最外院には金剛網が描かれる。胎蔵では中台八葉院
の外の遍智院・観音院・金剛手院・五大院の背景に金箔を押す。また外金剛部院にも金箔を
押す。その他胎蔵曼荼羅に限つた特徴では一切遍智印が逆三角形に描かれている。その典拠
は大日経疏にあり、大日経にはその記述はない。中台八葉院の八葉蓮華が白色で現図は赤
色。八葉院の九尊は各尊単独の蓮台には座しておらず八葉の蓮弁が蓮台となつている。大日
如来は五仏冠を戴かず髻髪を冠とする五大院の明王は瑟瑟座ではなく盤石座で大威徳明王は
海上を駆ける水牛に乗る。虚空蔵院の千手観音・金剛蔵王は現図では虚空蔵院と蘇悉地院の
上にまたがる様に描かれるが、新安流では両尊共に虚空蔵院の尊格として区別する。その他
最外院の諸尊が乗る獣座などはとりわけ動きがある姿で描かれる。
以上が現図曼荼羅と新安流曼荼羅の異なる部分の概略である。上田霊城師は浄厳の思想に経
疏為本があり、この姿勢から現図曼荼羅が改作されたとする。
画寸100㎝x100㎝ 極彩色、金箔押仕上、 表装・正絹四丁錦織、仏表装、双幅桐箱入り
・監修 童学寺、 ・表装作画 大進美術株式会社

新安祥寺流七十七尊両界曼荼羅 金剛界

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新安祥寺流七十七尊両界曼荼羅 胎蔵界

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