仏画コラム
About sects

12,如意宝珠曼荼羅

O-170 (摩尼宝珠)法身偈 如意宝珠曼荼羅

仏画

三弁宝珠 梵文 法身偈

仏画
「摩尼宝珠・大師御筆・法身偈」
大師の御遺告に言う如意宝珠と、仏舎利即如意宝珠とする二様が古くから大師の御伝として
伝えられております。大海の底の龍宮の宝蔵に無数の玉がある。その中で如意宝珠を皇帝の
ように最も優れたものとする。 図像内容は画面中央上部に三弁の宝珠を納置した重層の楼
閣があり、上下には大海の波間を描く、前方に広がる湧雲の中から水中の主である仏法守護
神の二大龍王が頭を持上げ三弁宝珠を讃仰するかの様に虚空を駆け昇る姿を描く。画面の右
側は難陀龍王で兄弟龍王の兄、長さ九尺(270㎝)にて九頭頂に蛇が居住すると言う。陰陽思
想の「九」は陽の極まり、数が極めて大きく強力であると言う意味で「九」を冠し九龍と呼
ばれ大龍なり、左側は跋難陀龍王で長さ七尺(210㎝)にて七頭頂に同じく蛇が居住する。七
龍と呼ばれ小龍なり、難陀龍王と跋難陀龍王は兄弟龍王なので、経典中は常に並べて紹介さ
れる。
龍王の姿と働きは、山谷を震動させ(地震)、気を吐いて雲を作り出し、(竜巻)天を暗く
して風を吹かし(台風)雨を降らす。尾で海水を打つて波を起こし、(津波)大身をくねら
して海を荒らす。国土とは龍体の大地であり、その地下には網の目の様に穴道がのびて巨大
な地下世界となつている。地上の入口が龍穴であり、仏法の法力により姿を現す龍神である
弘法大師の神泉苑の伝説によると金色の蛇のようで長さ八寸(24㎝)、善如龍王について
説く儀軌はなく伝説によりますが 大師の御遺告に大師は唐・留学からの帰国に際して師の
恵果阿闍梨より如意宝珠を付嘱されこれを鎮護国家の為に室生山中の精進峰に埋めたと伝え
られている。このことから平安時代以降、如意宝珠信仰が高まり、やがて不空の訳経で弘法
大師が請來したとする「如意宝珠転輪秘密現身成仏金輪咒王経」が撰述され、それにもとず
いて如意宝珠曼荼羅が描かれるようになつた。如意宝珠は古くから龍王の脳中より生ずるも
のと言われ、仏舎利が変じて宝珠になるとも伝えられており、室生寺との関係が様々に在し
ている。農耕社会の我が国では「龍」と「雨」を結びつける龍神信仰が古来より有り、龍は
雨を降らせ稲の豊作をもたらすと考えられてきた。龍神は五穀豊穣の神として善如龍王の神
名が授けられており、善如龍王は室生山の龍穴に住むとされ水神の威力を現す。室生寺の境
内の五重塔の上に奥之院(精進峰)、五重塔の下に(灌頂堂)・本堂があり、本堂正面の扁
額には大日如来(バン)・摩尼宝珠(マニ)・宝生如来(タラーク)の三文字の種字が一枚
の扁額に収められ、掲げられています。                       
如意宝珠の実体は自然道理の釈迦牟尼如来、宝珠は自然道理の如来の分身であると言うのが
真実の如意宝珠である。如来の分身とは駄都(dhatu)なり、即ち如来の舎利をいい舎利如意
宝珠として観ずる密教の最極秘法で、月輪中に如来駄都を観、その駄都変じて如意宝珠とな
ると観想する。御遺告には宝珠を観想して「帰命頂礼在 大海龍王蔵併肝脳頸 如意宝珠
権現」などと言うべきで、三度誦え、深く念じ観想して本尊の真言を念じ誦えるべきで、
これは三密教のかなめである処の本性を護るためなのである。またこの文は秘密であり、甚
深の上の甚深なるものである。この宝珠は宝蔵から大海の龍王の心の上頸の下に通じてい
る。宝蔵と頸とは断絶することなく永久不変である。ある時はその宝珠から善い風を出し雲
を四州に起こして万物を育成しすべての生けるものに対して利益を与える。水に住み、陸地
に生きるすべての生きとし生けるもので利益を被らないものはない。かの海の底の珠(双円
性海の菩提心)は常に(仏舎利を収める)能作性の如意宝珠のみもとに通じ親しく特性を
分かつている。と記されています。

本図像の三弁宝珠には大師御筆・法身偈の梵文が描かれており、仏陀の教えを端的に示した
偈文であり、 究極の意味は「縁より生じ縁より滅する法はもとより不生不滅」である。
本図の偈文は東寺・観智院開基で、東密学匠中の瑞一と評された杲宝(ごうほう・1306
~1362)の著した護摩秘要鈔・十巻に記載された陀羅尼である。
(注)この法身偈の梵文ですが少々不明な処があるように見受けますが、観智院の資料「法
身偈 梵本大師御筆」と記されていますので、仏画には変更せずに転写致しました。

「法身偈」  諸法従縁生  如来説是因  是法従縁滅  是大沙門説
いかなる物事も縁(因縁)に依つて生起する  如来はそれらの因(原因)を説くものなり
またこれらの(滅尽)をも  大沙門が説かれたものなり

杲宝 東寺観智院「法身偈」大師御筆梵文 資料

仏画