仏画コラム
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10,真言八祖像・東寺本 法系の正統性を伝える肖像画

東寺本 真言八祖像

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真 言 七 祖 像 ・ 七 幅 / 東 寺 本 ・ 国 宝 
真言密教の教義は、大日如来を第一祖とし、金剛薩埵以下、脈々と受け継がれていつた。こ
の血脈の中で特に重要視された八人の祖師象を真言八祖と言う。空海が唐・長安の青龍寺の
恵果阿闍梨から付属され、日本に請来したのは、金剛智、不空、善無畏、一行と師の恵果の
五祖像であつた。いずれも中国密教に深く影響を及ぼした高僧である。空海は帰国後の弘仁
十二年(821)、龍猛と龍智を新たに加えて七祖一組とした。この画像が今も東寺に伝わる
言七祖像(国宝)である。盛唐と平安初期の画風を示す貴重な作例である。なお空海は飛白
体と呼ばれる、流れるような書体で、各祖師の梵号と漢語(中国名)を揮毫している。空海
は生前、この七祖に自らの肖像画を加えることはなかつた。没後になつてようやく、高弟
の真如親王が描いたとされる空海像を加えて真言八祖像が誕生する。
真言密教においては、その教義が三国伝来であること、印度・中国・日本と正しく伝えられ
たものであると示す必要があつた。師の面影の伝授は正統的な後継者であることの証左であ
る。真言八祖は由緒正しき真言の血脈を示したものに他ならない。その一方で真言八祖の制
作目的は祖師を顕彰する事にあつた。画像を奉懸してそれぞれの祖師を礼拝するのである。
特に結縁灌頂や伝法灌頂の際に真言八祖は重要となる。法が師資相承される場で、証人と
して弟子を看守し血脈の一員たることを弟子に自覚させる役割を与えられたのである。こう
して真言八祖像を灌頂堂内に配する事が作法次第となつた。崇拝される対象として、また堂
内の荘厳として、真言密教道場に不可欠な画像であり、東西の壁面や梁などに四組ずつ対面
して配されるのが通例である。真言八祖像の姿は「龍三、龍経、金念、不縛、善指、一内、
恵童、空五、」と略称される。
東寺の真言八祖像の空海像の散文は 寛平法皇 の勅筆。
「日々(にちにち)の影向(ようこう)を闕(か)かず、
 處處(しょしょ)の遺跡(ゆいせき)を検知(けんち)す」
弘法大師は毎日欠かすことなく縁のある各地の遺跡に姿を現して人々のことを見守つている
と言う意味。
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