わが国に伝存する両界曼荼羅の最古本で京都西北の高雄山神護寺に伝来したことから高雄曼
荼羅として広く知られる。天長皇帝御願と記されている事から、天長年中在位の淳和天皇の
支援を得たことは疑いない、本図はもちろん空海の在世中であるから、空海請来本かその転
写本である東寺弘仁本を原処としたものであろう、後年これらを写したとされる高野山血曼
荼羅と高雄曼荼羅との諸尊の布置が一致する事は、請来本と高雄本との密接な転写関係を傍
証するものと言えよう。高野山血曼荼羅は、今はなき請来原本に代わる古本として、すでに
早く平安末期頃から着目され、白描図像として定本化されてきた兼意白描図像と呼ばれるも
のである。高雄曼荼羅は、金銀泥絵であり、また、高野山血曼荼羅は、極彩色絵であります
平成27年(2015)年、高野山開創1200年記念の年にはトツパン印刷の復元再生プロジェ
クトによって尊容のデジタル画像処理がされ、当初描かれた色彩が確認され蘇りました。高
野山血曼荼羅は、保元元年(1156)に平清盛により制作された弘法大師御請来直系の現図曼荼
羅で最古の遺品。よってこの彩色本を制作のよりどころとすることに致しました、また、兼
意は高野山遍照院中興2世、特に成蓮抄20巻は諸尊法を集成した大著で貴重視される、仏
画にも秀で御室版曼荼羅の原本となる高雄曼荼羅を模写した白描図像は重要視されておりま
す。弟子の正嫡は心覚、大蔵経、図像部一に金剛界九会大曼荼羅、仁和寺版1465尊、大悲
胎蔵大曼荼羅仁和寺版411尊、金胎総計1876尊、全尊が掲載されています。特に今回特に
注視しました金胎の外周模様は、金剛界宝生草(吉祥草)の穂先、大悲胎蔵木芙容が唐画原
本の優れた表現を伝えるものとして注目されるものと思います
真言宗各宗派では、9年後の令和16年(2034)には弘法大師ご入定1200年を迎えるにあた
り、各ご寺院では1200御遠忌大法会記念に向けての準備が進行中とのことです。今回制作
の両部曼荼羅、白描図、彩色完成本を良くご覧いただき御遠忌の記念として各真言宗ご寺院
の宝物としてお祀りして頂ければ幸いです。当社自信作であります。作画から表装制作に至
るすべての事は弘法大師への報恩感謝の気持ちを込めて制作にあたります。