仏画コラム
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54,般若最勝曼荼羅

A-61 般若最勝曼荼羅

仏画

A-61 般若最勝曼荼羅 表装:三弁宝珠錦(正絹)

仏画
A-61 般若最勝曼荼羅 1.6X2.7尺丈 表装裂地-正絹錦織三弁宝珠柄
知識の改善事項(智眼の獲得)
この曼荼羅は、大智度論、龍樹菩薩の中論、大般若経の統括した理論を本尊化した曼荼羅で
あり般若最勝曼荼羅と称します。
この本尊は、般若経の真髄を理解させ仏眼仏母菩薩の徳である全てを産み出す如意宝珠の内
証を説いています。これによって、金、銀、財宝、生命、祈りの成就を成し遂げる尊とも成
る故に、祈願する上でとても重要な曼荼羅と言えます。この曼荼羅をお祀りすれば、諸菩薩
も後へ下がる程のもので森羅万象を司る本尊です。
この仏説最上の曼荼羅の中央には、お釈迦様の悟りを顕す金剛界の大日如来の姿が描かれま
す。その周りには般若心経、理趣経の最上の徳を説く仏眼仏母菩薩の内証である万象の神で
ある四波羅蜜菩薩と知慧を向上させる五秘密菩薩の内証である常楽我浄の四金剛女が配置さ
れています。理趣経の説く煩悩即菩提、染浄不二の教理に基ずき、行者が実践する事によっ
て得られる成仏の悟境に他ならない。この配置は仏教の生まれ出ずる有漏(うろ)の理と滅
する無漏(むろ)の原理を説く事に通じています。この理を説くものが、如意宝珠であり、
真理を示すため、仏舎利が中に入っています。
般若の教えは、龍樹の中論でも説いていますが、「生死の根本原理・ダルマ(四波羅蜜の仏
法)・認識論(唯識)・因縁品・・・」これらの教えを大日如来を包囲する四波羅蜜菩薩と
四金剛女で表わしています。この菩薩が良き方向へと運び助けてくれるのです。仏教の中で
五神と称する神の本体がこの四波羅蜜であり、神通力、五神通の神であります。故にこの尊
が行者の神通力を増進させるのです。
左下には不動尊が座します。この尊は目的を持つ人や修行者(瑜伽者)の障害となる三毒(他
の欲望に心を奪われることの貪と、やけを起こして止めてしまう瞋と、愚痴を言って怠ける
心)を滅して、不動心の無我夢中の境地に入り、目的へ辿り着く精神の尊を配置します。
左上には大安楽普賢延命金剛薩埵が配置され、大安楽とは大楽金剛不空真実三昧耶経を指
し、人間に備わった智慧を理趣経の三段から十段で説く八大菩薩(ものごとを分析し研究し
ていく学び進む段階の尊)を開花させる事を示し、やがて金剛界十六大菩薩の能力が備わり
賢くなってきます。所謂十六大菩薩生の獲得です。この十六大菩薩は顕教では大般若十六善
神として拝しています。この智慧は深く研究する者は知らずに使っています。普賢延命と
は、賢く情報を集め長い間考え抜く事で金剛薩埵とは目的に向かう研究者であり、瑜伽者な
のです。ですから智慧と継続することの大切さをこの尊で説いています。故にこの尊は般若
の智慧である理趣経の三昧耶心を得させる尊なのです。よって、この尊は般若の智慧を授け
てくれます。
この曼荼羅の地模様に三弁宝珠の柄が施されているのは、金剛界の悟りの象徴なのです。一
つは智慧の十六大菩薩と賢却の経験値の十六大菩薩を表し、一つは人間の生産能力の千仏
(三千仏の略)と二十天の子供の生まれる原理であります。これが金剛界成身会の曼荼羅で説
かれています。これは大般若経の一巻二巻三巻等より説く八十種好であり、理趣経に説く八
十倶胝で説いているのです。
曼荼羅に於いては、胎蔵界曼荼羅に東門行•南門行•西門行•北門行に於いて、智慧と慈悲の
世界を教える修行が説かれ、外金剛部に於いて人間の生産能力を説く教えを説き諸天•星座
で表しています。この般若最勝曼荼羅はこの理の徳を表し、檀信徒の皆様には、諸願成就の
為の本尊となるのです。この理を含むが故に般若最勝曼荼羅と称しています。
次に右上には五輪塔が配置されています。五輪塔は言うまでもなく、人の命を表し、有漏の
生まれてくる理と死する魂の無漏の理の象徴であります。五輪塔の四面には梵字が記され、
正面には寂浄法生の世界である五大の理を左方には縁を起こす受•想•行•識が行いを成す。
五行の梵字が印され、裏面には身体の色が五感を感じた五神の梵字が記され、南面には人が
五感から情報を集めて考える意識の五種が印されています。これは仏法のダルマが動き命が
生まれて来る法界生の理論を説いています。そしてその内容は仏眼仏母の教えより開眼作法
の次第に印されて、仏生•仏法の理を示し教えています。これは、物事は初めを知り初めよ
り考える事が重要である事を教えています。密教に於いては阿字観がそれに当たります。
右下にはお大師様を配し般若経の悟りの理論である般若心経に法界生の理が、説かれていま
すので般若心経秘鍵の中で五乗の鑣(くつばみ)を持ってこの教えを説いて下さっています
ので尊座されているのです。この理を含むが故に般若最勝曼荼羅と称しています。

参考文献 高野山真言宗 現福寺 権大僧正 宮崎龍祥先生
仏画制作 大進美術株式会社