山水屏風 絹本著色(各扇)42,6x146,1 六曲半双屏風仕立
この作品はかつて東寺に伝来したもので、東寺には現在もこれと同図様の室町時代の模本
が伝わつている。広々とした春景色を背景とし、老隠士が山中に隠居する様を詩情豊かに
描いた図柄である。隠士は、平安貴族に敬愛された白楽天という見方が有力である。柔らか
い筆法や明るい彩色から11世紀の唐絵の遺品と考えられ、元来は世俗的な用途の調度品で
あつたがやがて東寺の灌頂儀礼に用いられる様になつた。山水屏風が灌頂に用いられるもつ
とも早い例は、寿永元年(1182)年の仁和寺観音院の結縁灌頂であり、それ以後は、しばしば
高位の人物の座所に立てられる様になつた。伝法灌頂の際に阿闍梨の後ろに飾られる様にな
り、密教法具の一つとして重要視された。国宝の「山水屏風」としては最古の遺品。
制作仏画 大進美術株式会社