仏画コラム
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4-4理趣経曼荼羅 金剛頂経と理趣釈
理趣経は、大般若経600巻中の578巻、「般若理趣分」の内容を密教的に発展整理され
たもの、理趣経の伝統的解釈はすべて不空三蔵の「理趣釈」に基ずいている。不空三蔵の解
釈は「初会金剛頂経」30巻本を基になされる。
1、・五秘密思想の確立
2、・金剛界曼荼羅の教理導入
3、・初会金剛頂経30巻本の教理導入
4、・外金剛部諸天の教理導入
5、・金剛界曼荼羅の完成
1、五秘密思想の確立(金剛界曼荼羅、理趣会)・(十七清浄句曼荼羅)
十七尊曼荼羅(五秘密を中心とする)~十七尊。
・五秘密~5尊
・春、夏、秋、冬~4尊
・嬉、笑、歌、舞~4尊
・鉤、索、鎖、鈴~4尊・・・・・・・・・合計17尊
(金剛頂蓮華部心念誦儀軌)
五秘密はそのまま大日如来を取り巻く阿閦、宝生、無量寿、不空成就と等しい境地。
・大日如来~法界体性智~定印大日如来
・阿閦如来~大円鏡智~金剛薩埵(金剛平等)
・宝生如来~平等性智~虚空蔵菩薩(義平等)
・無量寿如来~妙観察智~観自在菩薩(法平等)
・不空成就如来~成所作智~虚空庫菩薩(業平等)・・・・・・・・五智
2、金剛界曼荼羅の教理導入
・理趣経第2段~第6段~金剛界曼荼羅の教理に準処して説明。
第2段「毘盧遮那理趣会」
理趣経の智用を総論的に示す。~金剛界曼荼羅の四印会構成借説明
第3段「降三世理趣会」
金剛薩埵(金剛手)の働きを説く段~金剛界曼荼羅の金剛部「阿閦」の曼荼羅で示す。特に
忿怒金剛の性格を力説する為、降三世品の降三世大曼の忿怒金剛の立場で示す。降三世中心
に(薩)・(王)・(愛)・(喜))の菩薩。
第4段「観自在理趣会」
自性清浄の立場で、世界の真相を見抜くことを説く。観自在菩薩を中心とした(法)・
(利)・(因)・(語)の菩薩。
第五段「虚空蔵理趣会」
宝部の世界の実現を説く段。(宝)・(光)・(幢)・(笑)の曼荼羅で説き示す。
第六段「金剛拳理趣会」
身・口・意の一切の行動が如来の働きとなつて行くことを示す。(業)・(護)・(牙)・
(拳)の羯磨部の曼荼羅で示す。
理趣経は金剛界の智の働きの総括的なものを示すものと見ており金剛薩埵(金剛手)、観自
在、虚空蔵、金剛業の各尊で示された内容は第三段~第六段に展開して示され金剛界曼荼
羅、十六大菩薩の世界を完成しこれを基に金剛界曼荼羅37尊の世界が完成されて行くこと
を示す。
3、初会金剛頂経30巻本の教理導入
第七段「文殊師利理趣会」・第八段「金剛輪菩薩理趣会」・第九段「虚空庫菩薩理趣会」・
第十段「墔一切摩菩薩理趣会」・第十一段「金剛手菩薩理趣会」、
底辺にある八幅輪曼荼羅の思想を基にしながらも三十巻本の「初会金剛頂経」の教理内容を
基に理趣経の注釈がなされる。
第七段「文殊師利理趣会」
般若の智慧が、全ての世界の真相を把握していく無戯論智である事を力説する段。経の説く
諸法の空、無相、無願、光明の体得はすべて般若の働きによつて開かれるもので、これを金
剛界品、降三世品、偏調伏品、一切義成就品のそれぞれの文殊の働きとみている。理趣経で
は、般若の空の体得は金剛頂経に示す全金剛界曼荼羅の世界を開いていくものとみるから。
第八段「金剛輪菩薩理趣会」
前段を受けて般若の智は大輪の世界、即ち偉大な究極の曼荼羅の世界に引入させることを力
説する段。
理趣経釈では、金剛界曼荼羅六会、降三世曼荼羅十会、(教勅の四会含む)、遍調伏曼荼羅
六会、一切義成就六会の全曼荼羅(初会金剛頂経所説の全世界)を悉く証得されるものであ
る事を示す。
第九段「虚空庫菩薩理趣会」
般若の智用は供養の働きである事を力説する段。この供養は菩提心供養、灌頂供養、法供
養、羯磨供養、の働きであり、それを金剛界曼荼羅の内の四供養である(嬉)・(鬘)・
(歌)・(舞)の尊で示し、金剛部、宝部、法部、羯磨部の働きが完成されるものと説く。
第十段「墔一切摩菩薩理趣会」
般若の智用が金剛忿怒の働きとなつて行くことを力説する段。この忿怒の働きを、降三世、
宝金剛憤怒、馬頭明王、忿怒羯磨で示し、金剛部、宝部、法部、羯磨部は忿怒の働きにより
実現されるものであると説く。
第十一段「金剛手菩薩理趣会」
一切平等の世界を開く普賢菩薩の段はその働きが降三世教令にあつて始めて実現されること
を力説する段。忿怒降伏を通して金剛部、宝部、法部、羯磨部の大曼荼羅の世界が実現さ
れ、一切の平等が達成され、如来と衆生、仏と凡夫は一切平等となる。これを示す為、初会
金剛頂経に説かれた五類諸天(外金剛部諸天)を曼荼羅の中に配して、五類諸天が曼荼羅の
一如である事を示す。第十一段は、第二段以下第十段の内容を締めくくり理趣経の精神は金
剛界曼荼羅の世界を実現していくと共に初会金剛頂経の真髄を体得させていくものとし、如
来と衆生は本来平等であり衆生の心が開けばそのまま如来である事を力説する。この事を更
に徹底して示したのが、第十二段以下の教説である。それを外金剛部諸天の教理によつて示
す。
4、外金剛部諸天の教理の導入
第十二段「摩醯首羅天理趣会」・第十三段「七母女天理趣会」・第十四段「三兄弟天理趣
会」・第十五段「四姉妹女天理趣会」は衆生の心が開けば、それはそのまま如来であり般若
の智用は衆生をして如来たらしめる事を力説する段。第十二段の一切有情の如来蔵、金剛蔵
(宝蔵)、妙宝蔵、羯磨蔵はそのまま大円鏡智等の四智を生み出すものであるとしこの衆生
に即して仏智を生み出す働きを普賢(金剛薩埵の働き)、虚空蔵、観自在、一切金剛で示
し、金剛部、宝部、法部、羯磨部の世界が自ら体得出来るとする。この事をより簡明にする
ために、摩醯首羅天等の外金剛部諸天の尊をもつて曼荼羅を示し、それが金剛界曼荼羅の真
髄を示すものと説く。
第十三段「七母女天理趣会」、十四段「三兄弟天」、第十五段「四姉妹女天」も同様のパタ
ーンである。
5、金剛界曼荼羅の完成
第十六段「五部具会曼荼羅」
理趣釈中には載せない。金剛頂タントラを典拠とする。一切教集瑜伽経所説の曼荼羅
般若の真髄は無量、無辺、究竟の体得であり、それは毘盧遮那如来の「心」そのものと説
く。第二段「大日尊理趣会」で示された毘盧遮那如来の悟りは、衆生自らのものとして完成
されたことを示す。このありさまを金剛界曼荼羅の教理をもつて説いていく。つまり、如来
部をはじめ金剛部、宝部、羯磨部の世界はそれぞれ五部の徳を有しその徳は、無限にひろが
つて行く。五部の深い世界を開き広大無辺な金剛界曼荼羅の世界が体得されて行くことを示
す。
第十七段「五秘密曼荼羅」・(金剛薩埵布絵曼荼羅)
理趣釈中には載せない。一切教集瑜伽経よりの引用、
五秘密の世界の体得、初段で示した大楽の世界の体得であり、ここに十七清浄句の世界が味
得されて金剛界曼荼羅の核心となる。十六大菩薩の生命が得られると説く。
不空三蔵の理趣釈をみて、基本的には五秘密思想が確立し、五秘密十七尊の曼荼羅の世界が
初会金剛頂経とその世界を表示した金剛界曼荼羅の世界に素直に結ばれていつた。これを基
に金剛界曼荼羅と「初会金剛頂経」の教理を縦横に取り入れて、理趣経を解釈した。究極に
は般若思想は、金剛頂経の真髄を示すものとして、唯識論に言われる「一心真見道、十六相
見道」の思想を金剛界曼荼羅の核心となる十六大菩薩生に発展させていつた。
理趣経を短的に表した言葉があります。栂尾祥雲博士論文の中に、
理趣経は般若経を母胎とし(真実摂経)・初会金剛頂経を父として生み出された経典だと。

 

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