仏画コラム
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2018/08/02
11,普賢延命菩薩像
天台系二臂像、真言系二十臂像
普賢延命菩薩は、普賢菩薩から派生した密教系の菩薩像であり、サンスクリツトの「大安楽
不空真実菩薩」の意にあたる。Vajramoghasamayasattva。、長寿などを祈念する普賢延命法
の本尊画像。菩薩の乗る蓮華座は天台系二臂像では三つの頭を持つ一頭の象、真言系二十臂
像では四頭の象に依つて支えている。
天台系二臂像
一身三頭の白象王に乗る二臂像で、左に五鈷鈴、右手に五鈷杵を執り不空訳「普賢延命法」
の所説に基き忠実に描かれる。祈願対象は尊名からも明らかなように延命に関わる修法とし
て、人の生死に関わる普賢延命法の尊像には金素材のようなきらびやかな荘厳ではなく銀素
材に見られる白を基調とする落ち着いた光輝表現を求められるようになる。金は眩しく光輝
くものとして用いられるのに対して、銀は月の光のような奥ゆかしい表現に適する。
天台系普賢延命菩薩の代表作は平安時代後期に制作された京都・松尾寺本が有名で、優美な
像容と中間色で構成された平安時代後期特有の彩色表現が認められる。
真言系二十臂像
四頭の白象の背に乗る二十臂の普賢延命菩薩である。その多くは「金剛智口決」に依つてい
るが肉色が白肉色で表されているのは現図胎蔵生曼荼羅の遍智院に住する。大安楽不空金剛
三昧真実菩薩のそれと同一であり、この菩薩の肉身が儀軌に白肉色とあるのによる。菩薩は
五智宝冠を頂き二十臂の手に金剛界曼荼羅の十六大菩薩と四摂菩薩の三昧耶標識をとり蓮華
座に座しその下に四頭の白象が外方を向いて立ち象の頭頂には四天王が外方を向いて立つも
のである。真言系普賢延命菩薩の代表作は平安時代後期に制作された広島・持光寺本が有名
で、藤原仏画の鎌倉化を指向するものと解される。
P-89 天台系
白描図
P-90 真言系
白描図