仏画コラム
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2,秘鍵大師御影/般若心経秘鍵

秘鍵講義

仏画

P-82  秘鍵大師像

仏画

空海筆「心経」・破体心経

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破体心経に込めた想い(構想)・弘仁十二年(821)

お大師様は「般若心経秘鍵」の中で、「行行(ぎょうぎょう)として円寂に至り、去去(こ
こ)として原初に入る。 三界は客舎の如し。一心はこれ本居なり。」と述べられました。
つまり人は逝き行きて涅槃の境地に入り、また立ち帰つて命の原点に入る。果てしなく生と
死を繰り返す中、永遠の命を生きている私達にとつて人間の姿をとつているのは丁度旅館に
宿をとつているようなものである。いずれ旅立つ事になる。それを世間で「死」と言うが本
源の命に帰るだけのことである。と言う意味です。 又「秘蔵宝鑰」に、
「生れ生れ生れ 生れて 生の始めに暗く、死に死に死に 死んで 死の終わりに冥し」と
書かれています。人間は生死輪廻を繰り返していて無常であると言う事を如実に著して
おられます。人は自分の死後も生まれる前の世界もわかりません。わからないから 無明で
あり、暗くて避けることが出来ない宿命的なものなのです。だからこそ(十二因縁)を考察
することが大切であり、今ある命を大切に精一杯生きることに依つて良い輪廻が来ると思う
のです。仏教では人間は母親の胎内から生まれ「生」をまつとうして「死」にいたるまでの
間を十二の行程に分けて説いています。これを十二因縁又は十二縁起と言い重要視されます
お釈迦様が悟りを開いて仏陀になる事ができたのはこの因縁の道理を探究された為と云われ
ています。・・・(大悲胎蔵曼荼羅の遍智院に描かれている三角智印)を示す。
母親が胎児を慈しみ育てるように、仏が大悲の徳をもつて私達衆生の心の中に本来具わる仏
性(菩提心)を育て、あたかも蓮の種が芽をふき、華開き、実を結んでゆく様に、悟りの世
界へ導いてゆく様子を図絵化したもの、これが胎蔵生曼荼羅である。
お大師様は、大悲胎蔵曼荼羅と呼ばれている。・・・(大悲胎蔵曼荼羅・大日経)を示す。
大悲胎蔵曼荼羅は中央の大日如来を初めとして、409尊の仏、菩薩、明王、天部の諸尊がグ
ループ別に十二大院を構成されて描かれており、大日経に説かれる曼荼羅です。
大日如来の大悲の徳が同心円的に外に向かつて泉が湧き出る様に拡がり衆生済度をしてゆく
構造が示されている。またこれは逆に、迷える衆生が大日如来の大悲の徳に導かれて、悟り
の世界である中心へ向かつて収束してゆく構造も示している。
大日如来は法界定印を結ぶ。法界定印は衆生を表す左掌の上に仏を表す右掌を重ねることに
依つて、仏と衆生が一体である事を象徴する印相で、正に大悲大定の威光に包まれた姿と言
える。 八葉蓮華は仏の浄らかな菩提心を表すと共に、私達の心の内に本来具わる仏性(菩
提心)が仏種から芽生えやがて満開に華開き、悟りに至つた心の境地を示している。
大悲胎蔵曼荼羅全体が大日如来の胎内を意味し、生きとし生けるもの森羅万象がすべて大日
如来の子宮に宿る胎児の如く共存共栄していることを如実に物語つている。
空海の密教哲学思想の根幹は、大悲胎蔵曼荼羅・「大日経」にあり。
空海筆「心経」破体心経に込めた想いは、釈迦の因縁に基ずく三角智印「護国構想」十二
因縁のこと、空海の十住心論を視覚に訴えた十二大院大悲胎蔵曼荼羅)を示す。